従来の尾崎塾講演内容からの変更点

第4版からの変更点


自発呼吸のアセスメント指針の作成にあたって、今まで尾崎塾で使用されてきた文言を修正する必要性が生まれました。また、新たに定義し直さないといけない文言も多くありました。しかし、私達が観察する自発呼吸には変わりがないので、おもに文言の問題と言えます。

一方で、私達が信じる内容が生理学的に証明されていないものも多くあり、正確性を問うことが困難な場合もありました。そのような場合にはベテランのエキスパートコンセンサスに頼った部分も存在します。実際に議論しても答えが出ない部分もあり、多数決で決定していかないと「自発呼吸アセスメント指針」を完成できなかったことも事実です。

 そこで、今回の変更部分を簡単に示しますので、詳細は「自発呼吸アセスメント指針」もしくは「呼吸を診るためのテキスト:第5版」をご覧ください。下記以外にも細々とした変更点もありますが、主要なものを掲載します。

Ⅰ.時間成分の評価

  1. 尾﨑塾では実際の時間把握を推奨していますが、アセスメント指針では初心者は変化を把握することを優先した方が良いと言う意見が多く、そのための記録用の文言を準備した
  2. 「ポーズ」は停止を意味する用語であり、自発呼吸では吸息から呼息へ転換する際に呼吸運動の停止を確認することは困難であるほか、停止しない場合も存在することから「転換点」という文言に変更された。すなわち、流量は必ず吸気から呼気に転換されるので、点で示される時相が採用されることになった。
  3. 転換点前後の吸気終末と呼気初期には流量や呼吸運動が極めて緩徐になる時期(いままでポーズと呼んでいた時相)が存在するので、この時間帯を「移行帯」と命名した。決定的に今までと異なる部分は、移行帯は吸息相と呼息相に跨る時間帯であることで、今までのように「吸息」「ポーズ」「呼息」「休止」と連続する時相ではなく、「吸息相」「転換点」「呼息相」「休止相」が連続する時相であると定義された。移行帯は前3者を跨ぐ時相になる。
  4. 転換点と移行帯の評価を時間的に評価することは難しく、そこで、吸息から呼息への移行が「円滑」か「急」か、だけを問うこととした。
  5. 転換点は吸息から呼息に移行する場合にのみ使用し、呼息相から吸気相に変わる部分には混乱を避けるために使用しないことにし、呼気から吸気への転換部分には吸息開始点が使用される。仮に、この部分も転換点とすると、休止相のどの時点をもって転換したと判断に窮することになる。

 

 

Ⅱ.動きの成分の評価

  1. 自発呼吸パターンとしての、胸式呼吸、腹式呼吸、胸腹式呼吸を定義しなおし、正式な用語とした。
  2. 呼吸筋の主作動筋に斜角筋を含めることとした。
  3. 努力性呼吸の定義を新たに設けた。文言も整理し、努力性の吸息に使用される呼吸筋は「呼吸補助筋」、努力性の呼息に使用される呼吸筋を「呼気筋」とした。したがって、アセスメント指針では「補助呼吸筋」「吸気補助筋」「呼気補助筋」などは使用しないことにした。
  4. 努力性胸式呼吸をより詳細に記載し、努力性腹式呼吸との違いについて述べた。
  5. 胸部と上腹部、頸部の呼吸補助筋・腹壁の呼気筋の視診と触診を具体的に紹介した。

 

Ⅲ.Ozacuitを使用した実技セミナーの内容を紹介し、指導方法も併記した。

 

 

Ⅳ.聴診と打診は、次期改定で音声や映像を含めた改訂を行うこととして、実技指導の内容を加える改訂内容にとどまった。

 

 

Ⅴ.上気道閉塞パターンについての基本的な部分に変更はないが、より具体的な内容になるように改訂した。